糸満大綱引きを堪能する

沖縄通の旅行者に人気の町が、旧暦行事が今も残る沖縄県南部の漁師町糸満ですよね。

人間の力には及ばない海を相手にしてきた漁師町では、そこここに龍神様の祠があり、糸満市糸満の土地神様「白銀堂」を中心にして、今もなお、豊漁や航海安全を祈願した年中行事が行われています。

そのなかでも沖縄糸満まで来る旅行者が楽しみにしている年中行事が、「糸満ハーレー」「糸満大綱引き」です。糸満大綱引きは糸満人(いとまんちゅ)が主催する糸満人のための旧暦行事で、大人一人の胸ほどの高さにも匹敵する太さの綱を引き合います。

初めて沖縄を訪れる旅行者の多くは、国内外へ向けた観光イベントとして大きく発展した、那覇市の「那覇ハーリー」や「那覇大綱引き」ですが、沖縄糸満まで来た旅行者は、これとはまたひと味違う、ローカル沖縄を体感できるのが魅力です。

今回は中には毎年楽しみに訪れる沖縄通の旅行者もいるほど、「知る人ぞ知る」糸満大綱引きについてお伝えします。「ひと味違う沖縄旅行」を求めている方は、どうぞ参考にしてください。

糸満大綱引きを堪能する沖縄旅行☆
糸満人の楽しみ方

糸満大綱引きは旧暦8月15日

糸満大綱引きは旧暦8月15日
©OCVB
沖縄旅行でも那覇市は初めてでも楽しめるイベントや観光、中部はアメリカ西海岸を思わせる異国情緒、北部は南国リゾートを求めてやってくる人々が多いです。

そんななかで最も「沖縄通」の旅行者が訪れるエリアが沖縄南部、なかでも漁師町糸満は、長期旅行で沖縄の昔ながらの文化や御願行事(沖縄ならではの年中行事)や琉球空手を極めるなど、よりディープに沖縄に触れたい人々が集まります。

そんな沖縄糸満の魅力は「旧暦行事」です。糸満では年中行事のほとんどが今なお、旧暦で行われ、旧盆や旧暦8月15日の十五夜(ジューグヤー)などの旧暦行事になると、公立の幼稚園、小中学校までが半休や公休日になって、家族こぞって参加します。

【 ディープな沖縄糸満旅行なら「糸満大綱引き」☆2021年開催日 】

☆ 2021年度の旧暦8月15日は、2021年9月21日(火)です。この日に向けて一カ月ほど前から糸満人(いとまんちゅ)が準備や練習を始めます。(コロナにより中止の可能性もあります、ご了承ください。)

→ 旧暦8月15日は、家庭の祈願事と地域の旧暦行事とでは、少し意味合いが違うので注意をしてください。

(1) 十五夜拝み(ジューグヤウガミ)

糸満大綱引きは旧暦8月15日

→ 「月拝み(チチウガミ)」とも言う、家族の健康に感謝し祈願する月まつりの家庭行事です。ヒヌカン(火の神※)様とお仏壇には、「フチャギ」と呼ばれるお餅にあずきをまぶしたお供え物を供えます。

(2) 豊年祭

豊年祭

→ 糸満大綱引きは地域で祈願する大漁祈願・豊年満作のための奉納行事です。糸満地域を南北に分け、片方が雄・もう片方を雌として、その二つの綱を繋げることで豊作(実り)を表します。

お供えをしたフチャギはウサンデー(お供え物を下げて「お下がり」をいただくこと)しますが、他県のおはぎのように甘くはありません。

糸満市は漁師町ですので大漁祈願の糸満大綱引き(ジューグヤ・ハチグァッチジューグヤ)ですが、この他にも畑人(ハルサー)の地域では「八月遊び(ハチグァッチ・アシビー)」や「八月踊り」など、豊年祭にはさまざまな呼び名があります。

 

糸満人がこぞって参加する衆人綱(すにんじな)

糸満人がこぞって参加する衆人綱(すにんじな)
沖縄通の旅行者に糸満大綱引き人気が高いのには、糸満大綱引きは昔から(大衆の意味合いを持つ)「衆人綱(すにんじな)」、(大勢=万人の意味合いを持つ)「万人綱(まんにんじな)」の綱引きだからではないでしょうか。

那覇市の那覇大綱引きは観光客向けのイベントになっていますが、沖縄県内各地で豊年祭は行われているものの、多くの旧暦行事は地元の人々のみで盛り上がる閉鎖的な部分もあります。

けれども衆人綱の糸満大綱引きであれば、誰でも参加できるオープンな豊年祭なので、沖縄旅行で訪れた人々でも参加ができるため、国内外の沖縄へ旅行に来た人々が集まるのも特徴です。

【 ディープな沖縄旅行なら「糸満大綱引き」☆大綱の準備 】

大綱の準備

☆ 糸満大綱引きで使う大綱は糸満市内で10か所ほどに分かれた集落で、それぞれ地域住民が集まり、縄をなって作ります

(1) 一カ月ほど前から週に一度ほど集落の会館で集まって、それぞれのの集落で分担して作ります。

大口(うふぐち)27本 → 110メートルほどの長さの太い綱
ハクガキ13本 → 細い綱

(2) 糸満大綱引きの当日、それぞれの集落が作り上げた綱を持ち寄り、この綱を繋ぎ合わせます!

糸満大綱引きの大口の太さは、作業をしている男の人の腹~胸まで来るほどの太さで、その全長は180メートルほどなのですが、この綱を当日の午前中に繋ぎ合わせる訳です。

毎年の恒例行事なので糸満人(いとまんちゅ)は手慣れたものですが、この180メートルもの大綱が朝9時頃から午前中には仕上がってしまうので、沖縄に来た旅行者は「おぉー!」とばかりに見学しています。

 

糸満小学校から始める道ズネー

糸満小学校から始める道ズネー

沖縄旅行者の方は準備がひと通り終わったお昼時に、一度休憩すると良いかもしれません。糸満の人々もここで一度お昼に帰ってひと休憩です。

…と言うのも、地元の公立小・中学校は糸満大綱引きの準備のために公休日となっていて(小学校は半休の時もアリ)、午前中の大綱繋ぎでは中学生が大活躍しています。

この頃には出店も結構出始めていて、かなり賑やかになっています。

糸満大綱引きの終点は白銀堂で、糸満公設市場にも近いので、公設市場のカフェやステーキ屋さんなどでお昼をいただくのも良いかもしれません。

糸満ロータリーを白銀堂から向かって右側に進むと公設市場にたどり着きます。)

そしてお昼時を過ぎた午後からは、沖縄旅行者にも好評の「道ズネー」です。

【 ディープな沖縄旅行なら「糸満大綱引き」☆道ズネー 】

道ズネー

☆ 糸満大綱引きの道ズネー(道ジュネー)は、糸満小学校から出発して白銀堂まで、(1)ゆがふう(2)かりゆしの2つの旗頭(大きな旗を持ち上げながら練り歩く)を皮切りに始まります。

ゆがふう

→ 地元の子ども会や婦人会によるエイサーや手踊り、舞踊や獅子舞まで、さまざまな沖縄舞踊を堪能でき、地域のダンス教室サークルなどまで参加するので、バリエーションも豊富です!

糸満小学校から白銀堂までは約1キロ、小さな子ども達は水分補給をしながら進み、ある年の道ズネーでは、何と1000人を超える参加者となりました。

そのため、年によっては4時間近く道ズネーに掛かることもあり、メインイベントとなる大綱引きは夕方に掛かりますが、それでも沖縄旅行の醍醐味は充分です。

☆ お昼時に白銀堂にも近いディープな沖縄そば屋さんステーキハウス情報は、

【沖縄の長期旅行】糸満人が通うローカル&美味しい沖縄そば
【沖縄の長期旅行】糸満人に愛されるTHEステーキハウス

でもお伝えしていますので、コチラも参考にしてください。

 

いよいよ勝負!

いよいよ勝負!

最後の道ズネーが白銀堂まで着いたら、いよいよ沖縄旅行者も楽しみにしている糸満大綱引きが始まります。前年の勝者が優勝カップを返還する儀礼が行われた後、「ゆがふう」と「かりゆし」が睨み合うガーエーです。(ガーエー=我栄

ゆがふう」はふぇーかた(南方)、「かりゆし」はにしかた(北方)の陣営で、糸満に言い伝わる「支度(したく)」の姿をした人物が現れます。(「ゆがふう」が縁起が良いので、勝った方が「ゆがふう」になっています。)

ふぇーかた(南方)からはマカビチャーン、にしかた(北方)からはイチマンマギーと呼ばれる支度(したく)の姿をするのが習わしです。(この支度(したく)も糸満中学校の生徒が扮する習慣があります。)

ふぇーかた・にしかた交互に大きな綱を引き合うのですが、この引き方が面白いんです。

【 ディープな沖縄旅行なら「糸満大綱引き」☆引き方 】

いよいよ勝負!
©OCVB
☆ このふぇーかた(南方)・にしかた(北方)の支度(したく)同士の睨み合いも勝敗のひとつとして採点されます。

→ そして相手方が大綱を引いている間は、引かれないように綱に座ったりして、お互いに力を溜めながら、相手が疲れた頃に勝負を掛ける!と言う駆け引きが繰り広げられるのが特徴です。

昔は勝敗が付くまで長い闘いが繰り広げられていたため、この戦い方が出来上がったようですが、現在は最長でも30分になっています。

最初に10メートル以上引いたら勝敗が付くのですが、どちらも力が拮抗していた年は、2メートル基準で勝敗を決めるようになりました。(引き分けの年もあります。)

 
 
旗頭
いかがでしたでしょうか、今回は沖縄通の旅行者に人気の糸満大綱引きについてお伝えしました。

糸満大綱引きは国内外の沖縄旅行者にも比較的知られる、ローカルな旧暦行事ですが、実は糸満や那覇以外にも、県内のあちこちで綱引き行事は行われています。

ただ、糸満大綱引きが旧暦8月15日のジューグヤであるものの、同じく豊年祭のひとつとなる旧暦6月25日(カシチー)に開催される照屋綱引きや、六月ウマチー(6月豊年祭)に行う武富綱引きなどがあり、それぞれの集落によって日程が違うことも多いです。

真栄里大綱引き

衆人綱・万人綱と呼ばれる糸満大綱引きと違い、沖縄旅行者には参加が難しい、門中(父方の血縁)のみでの開催も多いので、確認をしてから訪ねてみてください。

☆糸満大綱引きで奉納される「白銀堂」については、別記事「沖縄旅行で訪ねる白銀堂☆糸満人が伝える参拝方法」、糸満ハーレーについては「ディープな沖縄旅行なら糸満ハーレー☆漁港でアヒル取り」でお伝えしていますので、コチラも併せてご参照ください。

まとめ

糸満の盛大な大漁祈願・糸満大綱引き

・旧暦8月15日、2021年は9月21日に行われる
・家庭では月拝みの旧暦行事もある
・糸満大綱引きは大漁祈願、航海安全の奉納行事
・衆人綱で、一般の人々も参加できる
・大綱引きに向け集落で綱をなって当日繋げる
・午後からは道ズネー、エイサーなど演武などで練り歩く
・南方北方に分かれて支度が登場し睨み合う
・交互に引いて30分勝負、10メートル引き込んだら勝ち

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